- Mr. David Chittenden (Science Museum of Minnesota)
- Dr. Marco Molinaro (University of California, Davis)
- 黒田玲子氏(東京大学)
- 渡部潤一氏(国立天文台)
Mr. David Chittenden (Science Museum of Minnesota)
"University Researchers and Science Museums ― How Can They Work Together to Increase PUR ? ―"
- サイエンス・バズ
Chittenden氏は、はじめに、所属するミネソタ科学館が、ミネソタ大学と連携し進めている、
サイエンス・バズの事例を挙げ、米国におけるPURのモデルケースを紹介しました。
サイエンス・バスとは、ミネソタ大学の若手研究者と、彼らが行う最先端の理工系研究とを、
科学館の展示として紹介する企画のことです。この企画では、大学の研究者、科学館、大学院生
が連携することにより、研究成果が一般市民にまで、広く共有されていることを示しました。
- 科学技術と社会との関係
Chittenden氏は、また、科学技術と社会との関係のシナリオの決め方には3つの方法があることを示しました。
- 科学者が決めるべき
- 科学者に任せていけない。NPOや市民団体が科学者を監視する。
- 一般市民が決める
この3つには絶対的な正解というものはなく、課題や状況に応じて正解は変化しうるものです。
ここで大切なことは、科学技術に関わる人々が対話し、互いの率直な意見を抽出することです。
- 地域社会のネットワーク活用
米国では、図書館、企業センター、メディア、などを通じて、地域社会のネットワークが構築されており、
科学館のネットワーク、大学の研究所(技術、社会科学)、資金提供者のパートナーシップに大きな影響を与えています。
このネットワークを、より積極的にPURに活用することが重要である、と話を結びました。
Dr. Marco Molinaro (University of California, Davis)
"Connecting Students, Teachers, Researchers and the Public from Nanotechnology to Biophotonics
― Experiences, Models and Evaluation Results ― "
カリフォルニア大学デイビス校のMarco Molinaro氏は、現在までに携わった2つの大きなアウトリーチ活動を紹介しました。
- ナノテクノロジーの事例
カリフォルニア大学附属博物館では、8歳以上の一般市民を対象に、ナノテクノロジーの展示や家庭に持ち帰れる
キットの作成、実演、説明、質疑応答を行いました。この活動の主な目標は以下の3点です。
- 一般市民にナノを長さの単位として認識させる
- 科学者を身近な存在に感じてもらう
- ナノテクノロジーがどのように役に立つかを知ってもらう
この活動から、以下の結果が得られました。
- 来館者が展示に直接触れ、体験できるハンズオン型が有効
- 多くの一般市民は展示のテーマを理解し、活動の目標は達成できた
- 対象の年代に合わせた説明が重要
- 活動を通じ、一般市民の科学者への見方が好転した
- バイオフォトニクスの事例
Center of Bio-photonicsでは、25のプロジェクトを、教育、研究、情報提供、
企業との連携の中で進めています。教育プログラム部門では、5歳以上の一般市民を
対象とした多様なコースを用意しています。
メンター制度を取り入れ、各プログラムに関わる者が、学びながら、教えながら、
プログラムをみんなで進める点が特徴です。企業とも連携し、中学生、高校生が、
研究機関の中で指導を受けながら研究に参加することもできます。
今後、PURを促進するためには、教育と研究の境界を取り払い、楽しいと感じる人の周りに
科学を楽しむ輪を広げることが重要であると、話をまとめました。
黒田玲子氏 (東京大学)
「市民に科学を伝える―何を、どう伝えるか―」
黒田氏は、研究者の立場からのPURの実践例、および東京大学大学院科学技術インタープリター
養成コースについてお話されました。
- 研究者に望むこと
一般市民が科学の基礎知識、科学的な思考を身につけるためには、次の2点が重要です。
- 研究者の顔が見えること
- 研究の現場との距離を縮めること
- 東京大学大学院科学技術インタープリター養成コース
上でかかげた目標を達成するためには、最先端の研究を行う科学者自らが、一般市民と向き合い、
難解な科学の事象を通訳・翻訳し伝える必要があることを訴えました。
現在、東京大学大学院の科学技術インタープリター養成コースでは、修士課程以上の学生を対象に、
何を伝えるか自分で考え判断する能力を備え、社会の中の科学を意識して情報を発信できる研究者を育成しています。
渡部潤一氏 (国立天文台)
「国立天文台の新しい広報普及実験」
渡部氏が勤務する国立天文台には、マスコミ、一般市民、アマチュア天文家を対象に、天文に関する
正しい理解と感動を、クライアントである一般市民と共有するため、情報センターが設けられています。
このセンターでは、3名のスタッフを中心に、以前より行われていた観望会の体制変化、およびスターウィーク
やアストロノミー・パブといった、新たな広報普及活動に取り組んでいます。現在までの活動から、
日本においてPURを推進する鍵は「インタレスト」、つまり一般市民の興味を引きつける環境の整備が
大切であると訴えました。また、PURは、一般市民には知識がない、という前提のもと、情報がトップダウンで
伝達される形式を改善する必要があること、一般市民が科学者に対しフランクに質問できる雰囲気を創造する
ことが重要であると主張しました。